下部消化管の評価
消化管の評価手順(炎症性腸疾患を念頭に)
炎症性腸疾患を念頭においた小児消化管エコーの評価について、2023年に専門家からのコンセンサスが発表されています[1]。
このコンセンサスにもとづいて、標準的な下部消化管エコー評価法について、簡単に解説します。
層構造まで念頭においた場合、しかも小児の体格(サイズが小さく、脂肪組織が少ない)という条件であれば、
基本的に消化管の大部分をリニアプローブで評価することができます。
SC:S状結腸、DC:下行結腸、TC:横行結腸、AC:上行結腸、TI:終末回腸
IA:腸骨動脈、IV:腸骨静脈
S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回盲部・終末回腸と全結腸を評価します。
ただし、経腹超音波による直腸病変の検出感度・特異度は非常に低いため、評価対象外となっています(直腸を詳細に評価する場合には経会陰アプローチが有効です)。
Tips:
lS状結腸は、左総腸骨動脈(IA)を乗り越えるので、左IAがメルクマールとなる
l横行結腸は後腹膜に固定されていないので、向きは様々。大動脈を描出して、剣状突起に向かってプローベを上方へ移動すると探しやすい。
l脾彎部から近位下行結腸の描出は、肋骨とかぶるため難しいことも多いが、深吸気してもらうことで見やすくなる
消化管の層構造
腸管は超音波で5層構造として描出されます。
内腔(Lumen) high
粘膜(Mucosa) low
粘膜下層(Submucosa) high
筋層(Muscularis propria) low
漿膜(Serosa) high
腸管壁厚は、内腔 highの外側 ⇔ 漿膜highの内側で計測します。
正常は<2mmです。
カットオフ値は>3mmです。
2-3mmの場合には、粘膜下層が目立つ場合には病的である可能性が高まります。
消化管エコーで最も重要なのは、腸管壁厚になります。
これに加え、下記の点に着目して評価します。
①腸管壁厚
②カラードプラーシグナル
③腸管壁構造の不明瞭化
④ハウストラの消失
⑤周囲脂肪織の輝度上昇
腸間膜リンパ節腫脹
演習問題の症例画像を参照し、目を鍛えてみてください。
参考文献:
- Kellar A, et al. J Pediatr Gastroenterol Hepatol, 2023