解説
潰瘍性大腸炎
病歴 | 【症例】 13歳、女児 【主訴】 腹痛 【現病歴】 Month -1 感冒罹患、数日で軽快し、消化器症状の出現はなく、以降問題なく経過していた。 Month 0 腹痛、下痢、血便が出現。 かかりつけ医受診し、整腸剤にて経過観察。 血便は一旦落ち着いたが、腹痛・下痢は持続した。 Month 2 コロナワクチン接種 再度血便が出現するようになり、腹痛・下痢症状も増悪した。 Month 3 症状改善なく、炎症性腸疾患が疑われ、精査目的に当院受診した。 |
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3か月前から出現した慢性(反復性)の腹痛、下痢、血便症状を呈する13歳女児です。
身体所見 | 【現症】 Ht 159.2 cm (+0.95SD) BW 51.15 kg (+0.6SD)、最近の体重減少なし BT 36.9 ℃ BP 113/74 mmHg HR 70 bpm SpO2:99 %(room air) 意識清明、眼球結膜黄染なし、貧血なし、咽頭発赤なし 扁桃腫大なし、頚部リンパ節腫脹なし 呼吸音清、心音整・雑音なし、腹部軟、圧痛なし、蠕動音正常、肝脾腫なし 下腿浮腫なし、皮疹なし、関節痛なし、肛門病変なし ツルゴール低下なし、末梢冷感なし、CRT<2sec |
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一般診察およびレントゲン所見では特に異常所見は認められませんでした。
採血では白血球およびCRPが軽度上昇しており、その他の炎症マーカーである赤沈、アミロイドAも高値でした。さらにIgG高値でもあり慢性炎症を疑う所見です。
炎症性腸疾患のマーカーであるLRGや便カルプロテクチンも高値でした。
PR3-ANCAは、潰瘍性大腸炎で上昇し得るマーカーです。
これらの所見から、潰瘍性大腸炎を第一に疑い、超音波検査を実施しました。
炎症性疾患を疑うなど、下部消化管を中心とした超音波評価の手順は、基本編をご参照ください。
→ https://kodomo-echo.com/post/basic_abdomen/250/
<左下腹部斜走査>
左IAをまたぐ腸管ですので、S状結腸であることが分かります。
腸管は鉛管様に描出されており、ハウストラは消失しています。
この腸管周囲の脂肪織輝度は上昇しており、この輝度が上昇した腸間膜内には1cm以上に腫大したリンパ節も認められます。
<左下腹部斜走査(上画像よりもやや内側)>
同部位をリニアプローベで詳細に観察しています。
腸管壁厚は6.1mm(>3mm)と明らかに肥厚しています。特に粘膜層および粘膜下層の肥厚が目立っています。
肥厚した腸管壁には血流信号が認められ、活動性の炎症があることが疑われます。
5層構造はしっかりと確認でき、壁構造の不明瞭化は認めません。
エコー所見のまとめと結論
潰瘍性大腸炎を強く疑います。
補足
内視鏡検査では、エコー所見に一致して全結腸に炎症所見が認められ、潰瘍性大腸炎の確定診断に至りました。
直腸から盲腸に至るまで、連続性に血管透見の消失、白苔を伴うびらんを認め、粘膜は微細顆粒状であり、易出血性であった。
病理では、陰窩のねじれを伴って、陰窩膿瘍を伴う高度の炎症細胞浸潤を認めた。